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睡眠導入剤を飲んだ翌朝の副作用:原因と対処法
はじめに

睡眠薬を服用した翌日、こんな経験はありませんか? 重要な会議を前に、どうしても眠れない夜。仕方なく睡眠薬を服用したものの、翌朝になっても頭がボーっとして集中できない。「この状態で大丈夫だろうか」という不安を抱えながら、仕事に向かった経験があるかもしれません。
実は、このような悩みを抱える不眠症の方は決して少なくありません。睡眠薬を服用した翌日の眠気やだるさに悩んでいて対処法を知りたいという相談は睡眠外来でもよくあります。その他、頭痛、吐き気、ふらつきを経験する人もいます。これらの症状は睡眠薬の持ち越し効果によるものです。
午前に薬の効果が残った状況は、ビジネスマンでは仕事効率に影響します。具体的には、重要な会議や打ち合わせに支障をきたすケースが報告されています。そればかりか、出勤、送迎のために車を使っている人では、交通事故のリスクが高くなります。このような実態を踏まえ、仕事効率や安全面への影響から、睡眠薬の翌日への持ち越し効果をいかに抑えるかが、課題になっています。
このページでは、睡眠専門医の監修のもと、睡眠薬の翌日に生じやすい副作用と影響、どんな睡眠薬のときに有害事象が起きやすいか、対処法について、解説していきます。
睡眠薬による翌日の眠気・だるさの原因

1.薬の種類と効果の持続時間
睡眠薬には、さまざまな種類があり、睡眠薬の効き目の長さも、薬によって大きく異なります。朝までにほとんど薬が体から抜ける短時間タイプから、翌朝まで効果が続く長時間タイプまで、いろいろです。
たとえば、2~4時間程度で効果が切れる超短時間型(例:アモバン、ルネスタ、マイスリー、ハルシオン)は、翌日への影響が少なく、寝つきが悪い人に使われることが多いです。したがって、超短時間型の睡眠薬は、入眠困難がある人で朝すっきり起きたい方に向いています。ただし、依存性があるので、長期の使用には注意しましょう。
4~8時間程度持続する短時間型の睡眠導入剤(例:デパス、レンドルミン、リスミー、エバミール)は、入眠困難と中途覚醒に適していていますが、人によっては、朝に軽い眠気を感じる場合があります。
一方、8~24時間持続する中間型(例:サイレース、ベンザリン、ユーロジン)、および24時間以上効果が続く長時間型のタイプの薬(例:ドラール、ダルメート)では、翌日の活動に影響が出やすい特徴があります。
つまり、半減期が長い薬剤は、翌日の眠気、倦怠感を引き起こしやすく、持ち越し効果が現れやすいです。
不眠症の治療として依存性のない睡眠薬が処方される傾向がありますが、オレキシン受容体拮抗薬(例:デエビゴ、ベルソムラ、クービビック)においても、翌日に眠気が残る場合もあります。
参考までに、市販の睡眠改善薬にはジフェンヒドラミン塩酸塩が含まれており、通常の用量である50mgの血中濃度半減期は約9時間です。そのため、起床時に睡眠薬の副作用と同じような症状(眠気、倦怠感、めまい、吐き気など)が現れることがあります。
2.体質的要因
薬の効き方には、個人差があります。当然のことながら、私たちの体の仕組みは一人一人異なります。
例えば、薬を分解する肝臓の働きや、体から薬を排出する腎臓の働き、年齢による体の変化などが、薬の効き方に影響を与えます。人によっては、眠気、だるさが翌朝の活動時間帯に現れる可能性があります。
また、体の大きさ、薬への敏感さ、持病の有無といった体質的な要因も関係します。
3.生活習慣の影響
普段の睡眠時間や食事の取り方、カフェイン摂取の状況、運動習慣、飲酒および喫煙の習慣なども、薬の効き方に影響を与える要因となります。
4.その他
寝室の環境や仕事の忙しさ、メンタルの状態、季節や気温の変化といった生活環境も、睡眠薬の効果に影響を与えることがあります。
翌日の副作用を抑える睡眠薬の飲み方

睡眠薬の副作用をなるべく少なくして、質の高い睡眠を得るためには、適切な服用方法と生活習慣の見直しが大切です。以下のポイントを意識してみましょう。
服用のタイミングは注意すべき点です。朝の眠気が残るなら、深夜0時を過ぎてからの服用は避けたほうが無難です。そして、毎日決まった時間に服用することで、体のリズムが整いやすくなります。特に翌日早めに予定がある場合は、就寝時間を早め、それに合わせて服用時間も調整することを勧めます。遅くとも就寝6時間前までに薬を飲むようにしましょう。
食事との関係も関わってくる要因です。夕食との関係では、晩ご飯を食べてからすぐの服用は薬の吸収が遅れる可能性があるため、2~3時間以上空けることが理想的です。一方、夜食については、基本的に避けるべきです。そして、覚醒作用を持っているカフェインを含む飲み物は控えましょう。
また、他の薬との併用には特に注意が必要です。アルコールとの組み合わせは、副作用が強まる危険性があるため、絶対に避けてください。同様に、抗アレルギー薬などの眠気を誘う薬、市販の風邪薬や咳止めなどを併用するときは、医師あるいは薬剤師に飲み合わせを必ず確認してください。
よくある症状に対する具体的な対処法

持ち越し効果として相談を受けることが多い症状は、眠気、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などです。睡眠薬が効きすぎて朝起きられないという事例もあります。
症状がひどいときは、翌日の仕事をキャンセルしたり、休んだり、休養することを勧めます。そして、薬を処方してもらった医師に相談してください。
起床時に眠い、だるいと感じたり、めまい、ふらつき、頭痛、吐き気が生じたり、副作用の症状が現れたら、睡眠薬の中止、減薬あるいは変更、服薬時間の調整などの対応が必要です。
半減期の長いベンゾジアゼピン系の睡眠薬が処方されている場合は、より短い効果時間の睡眠薬への変更を検討します。一方、オレキシン受容体拮抗薬の場合には、翌日に頭がぼーっとする、だるいという副作用が出現したら、より短い半減期のものを検討しましょう。本邦では、クービビックが候補になります。
超短時間型の睡眠薬であるアモバンとルネスタでは、翌朝に苦いと感じる場合があります。口の中に苦みが残る副作用は、アモバンとルネスタにみられる特徴です。気になる場合は、他の薬の変更を検討します。
人によっては、睡眠薬自体が体質的に合わない場合もあるかもしれません。どの睡眠導入剤を試したけど正午くらいまで眠いという人もいるかもしれません。そのときは、不眠症の漢方薬が代替案になります。